人材・組織育成コンサルタント知念のブログ

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「働きやすさ」と利益は関係するか?

働きやすい職場が利益を生むのか?という疑問

今朝の日経新聞の一面に「働きやすさ、収益に直結」という記事が大きく出ていました。
日経新聞が上場企業・有力非上場企業602社に対して「働きやすさ」の視点で独自に格付けを行ったものです。
働き方改革が政府主導で打ち出されたものの、
残業規制や賃金の格差解消、非正規雇用者への待遇改善などルールやシステムに関する話題が多く、「どのように働くか」という議論がされていないなあと思っていました。
法律改正には対応しなければいけないけれど、皆さんどこか受け身。
「働きやすい職場をつくったところで、売り上げに結びつくかどうかは疑問だ」
「多様性を尊重する職場というけれど手間暇がかかるし、実際の仕事に支障が・・・」
といった声を多く聞きます。
今日のこの記事は、そんな疑問への1つの答え「働きやすい職場は利益を上げてくれる」を明確に見せてくれたように思います。

ただし、この手の調査は対象となる母集団の選び方や調査の方法に恣意的なものがある場合もあります。
参考資料の一つととらえるのが良いというのが、私の考えです。
日経新聞は今回の格付けを3つの要素で進めています。

・多様で柔軟な働き方の実現(人材活用力)
・新規事業などを生み出す体制
・市場を開拓する力

柔軟な働き方だけではなく、新規事業・市場開拓力の2つの要素を組み合わせている点がポイントで、この3要素で組織のパフォーマンスを引き出す取り組みを「スマートワーク経営」と名付けています。
更に「経営基盤」も加味されています。
純粋に働きやすさだけで評価しているわけではないですね。



「働きやすさ」とは一体何か?

では、働きやすいとは何を指すのでしょうか?
調査の指標を見てみると、次のような項目が上がっていました。

<多様で柔軟な働き方の実現(人材活用力)>
・方針・計画と責任体制
・テクノロジーの導入・活用
ダイバーシティーの推進
・多様で柔軟な働き方の実現
・人材への投資
・エンゲージメント・モチベーションの向上
・人材の確保・定着


イノベーション力>
・方針・計画と責任体制
・テクノロジーの導入・活用
・新事業創出
イノベーションの推進体制
・社外との連携

<市場開拓力>
・方針・計画と責任体制
・テクノロジーの導入・活用
・ブランド力
・市場浸透
・市場拡大

<経営基盤>
・ガバナンス/社会貢献/情報開示を総合的に評価

「エンゲージメント」という言葉が新しいですね。
従業員満足ではなく「エンゲージメント」。
エンゲージメントとは、企業への「愛着」です。
愛着を持つことで、日々の業務に熱心に取り組み、業績向上につながるという概念です。
企業へのエンゲージメントが高い社員が多いと、業績が高くなるとされています。
この視点と経常利益だけで調査・格付けをしてもよかったと思うのですが、
調査主は、
「働きやすい職場がイノベーションを生み、市場開拓を強力に推し進め、利益を上げる」というストーリーを立てたということでしょう。

このような調査結果をどのように活用するかというと、
自社の状況をチェックする、
これから先の改革に項目を使ってみる、
自社で独自の指標を作成する、
といったことが可能です。
私はいつも「自社で独自の指標」をつくることをお薦めしています。
特に今回は調査の対象が上場もしくはそれに匹敵する規模の企業なので、中小規模の企業には使いにくいかもしれません。